あるデザイナーの告白。

あるデザイナーの告白。実話である。

あるデザイナーの告白

まずわたしの自己紹介から、
わたしは大阪の制作会社で働いている
あるデザイナーです。

もともとはキャンペーンサイトなどの
ウェブデザインを制作していた。

会社の新しい事業がスタートすることになり
新しい部署に異動することになった。

「新聞広告、作ってくれない?」と営業が言った。
「○月○日に掲載するから、段取りヨロシク」

きょとん、とした私に
「デザイナーだからいけるっしょ?」
こんな感じのノリで営業は去っていた。

ふざけてんのか?という気持ちだった。

今の私は、
新聞広告の入稿を何度も経験しているので
そんなの簡単だ。

その当時の私は、
紙媒体のデザインをしたことがなかった。
キャッチコピーも書いたことがなかった。
当然、新聞広告なんて作り方もわからない。

唯一の救いは、
別の部署の先輩デザイナーが
紙出身の人だということ。

新聞広告の入稿のことや、
制作した広告についてアドバイスをもらったりして
すごく助かった。

その先輩がいなかったら、
とっくに会社辞めていたんだろうな、と思う。

「なんで俺がこんな仕事しないといけないんだ」

当時のわたしは、
こんな気持ちで仕事をしていた。
常に怒りMAXだった気がする。

振り返ると、
そんなに怒らなくていいじゃん。と思うが、
当時は色々とフラストレーションが溜まっていて
不安定な時期だったのかもしれない。

始めて新聞広告を入稿した日は、人生で一番最悪な日でした。

新聞広告を新聞に掲載するには、
掲載する広告データを新聞社に入稿しなければならない。

もっと詳しくいうと
イラストレータというアプリケーションで
広告をレイアウトして、データをEPS形式に保存する。
MOやCDなどの記録メディアに保存して、
新聞社に郵送するか直接新聞社に届ける。

データの作り方は各社ごとにガイドラインがある。
入稿ガイドという冊子みたいなものを、
だいたいの新聞社が用意している。

たとえば
・入稿するにはマックで制作したデータじゃないとダメとか
・このサイズで制作してねとか
・保存メディアはMO※だけですよ。
・ひとつの原稿をひとつのメディアに保存してね
などが記載してある。

※今ではCDに切り替わっている新聞社が多いですが、
今から7年ぐらい前はMOの方が主流でした。

という感じで
今の私は説明できるまで理解しています。

7年前のわたしは、
まったくもって知識ゼロ。
毎日、不安で不安でしかたなかった。

始めて広告データを新聞社に入稿したとき、

「データがおかしいので再入稿してください」
と新聞社から突き返された。

入稿ガイドを、ずっとにらめっこしながら
どこがおかしいのか確認する。

サイズが違う?画像の形式に問題あり?ゴミファイルが入っている?

それはすでに確認したよね。
という所も確認する。

確認しても確認しても、
どこに問題があるかわからない。

何度も新聞社からNGが出た。

今日入稿しないと、
掲載できません。という所まで来た。 

ヤベー。どうする?
逃げる?←気持ちとして逃げたかった。

どうなっとんねんと怒る営業。 
うるせー今調べてるんじゃいと私。(口にはしていないが)

時間が差し迫っているが
問題は解決していない。

なんとなくここに問題があるかな
というところをつぶしていきながら
入稿データを完成させた。

営業さんと私で新聞社へ駆け込んだ。
そして新聞社の数人が出迎えてくれた。

入稿データを確認してもらう。

MOをドライブにいれて、データを確認。
何かよくわからないけど
新聞社のシステムっぽいもので
データの確認。

しばらく待つ…

データは問題なしです OKです。 ←よっしゃ!
一応、印刷機からラフ印刷して確認することに。

印刷が終わるまでの時間は
何分ぐらいだったか忘れたが、
途方もない長さに感じられた。

印刷機から広告データが印刷され、
みんなで確認することに。

やった、やったよ俺。
よくがんばった俺。

正直やっと終わったぜ
という気持ちだった。

そもそも「データがおかしいので再入稿してください」
というのも乱暴な話である。

どこがおかしいのか教えてくれたら、
そこを直すのに。

その時に自分に、
今の自分がアドバイスすることは

どこがおかしいですか?具体的に教えてください。
データがおかしいではわからないので
データ確認された人に代わってほしいです。
と言いなさい。

普段何気なくみなさんが見ている新聞広告は、
どこかの、誰かが作っています。

あの時のわたしのように
今日もどこかで苦しんでる人いるかな?